BLACKNESS DRAGON ~希望という名の光~


1段…否、2・3段とばしで駆け登るマリン。

息を切らしながらも、スピードを落とす事なく懸命に登って行く…


そんな彼女の後を追っていたはずのライナスだが、今や彼の目からは彼女の姿を捉える事はできなくなっていた。



 「ハァ…ハァ……長ぇ………」


足を止め、膝に手をつくと、荒い息を整える。




そんな彼の元へ、再びやってきた不思議な風…


赤みがかった髪を揺らし、目を細めるライナス。



 「…レナ……ナツキ………」


小さく囁くと悔しそうに唇を噛む…




すると彼は右膝を突き座り、ゆっくりと目を瞑ると、右手をそっと床に添える…



 「『風より速し、瞬く光よ……今ここに、姿を現せ………』



周りの空気が代わり、彼の触れる床が眩い黄色に輝き出す…



そして、何かを決意したように顔を上げた。




 「『俊足の足を持つ者よ………我を連れ、走り去れ!』」



呪文を唱え終えると、黄色く輝いていた床が更に光を増し、その光の上に座るライナスの体がフワリと宙に浮いた…


宙に浮いたかと思えば、彼の体はその場から消え、丸い1つの光が物凄いスピードで飛んでいったのだった…






階段を駆け登り、肩で息をするマリン。

彼女は一気にこの長い階段を登り終え、後ろを振り返る事もなく前だけを見据え走り続ける。


後ろから追ってきているはずのライナスの足音は聞こえなくなっていた…

その事を気にしながらも、ただひたすら走り続ける彼女。


小さな治療室が見えてきた時…


 「!?」


彼女は突然、その足を止めた。

そして、そっと乱れた髪に触れる。


彼女の横を、目にも留まらぬ速さで不思議な光の物体が通り過ぎたのだ…


その光から感じた強大な魔力…

そして聞こえた、「敵の狙いは長だ。」という声…



 「ライナス……」


彼女はそう呟くと、再び走り出した。

あの小さな光を追って…


その光と彼女は、ルリの眠る治療室の前を通り過ぎる…

その中で何が起こっているかも知らずに…


ただひたすら、皆を護ろうと必死だった…