何十階もの地下の部屋。
暗闇の部屋を、ほんのりと蝋燭が照らし出す。
埃を被った本や資料が散らばる床の上…
山積みになった分厚い本、開いたままの重い辞書…
それらを片付けていたはずの2人の人物は、今や机の上に身を伏せていた。
だが彼等は、寝ているという訳ではないようだ。
机に伸ばした左腕に頭を乗せ、魔法陣や古代文字の描かれた分厚い本を見つめているライナス。
めったに見られない、真剣な表情でページをめくる。
その隣、両手を組み、その拳の上に顎を乗せ、資料を眺めるマリン。
彼女は、体術の資料であろう本を眺めていた。
物静かに時が流れ、ページをめくる微かな音しか聞こえない。
そんな中…
窓もなく、扉も閉まったこの部屋の中を、何かを知らせるような風が舞い込んだ…
その小さな風は、2人の髪を揺らし、ライナスの見ていた分厚い本のページをパラパラとめくる…
それを不思議そうに眺めるマリンと、目を細め、突然立ち上がったライナス。
急に立ち上がった為、腰掛けていた椅子が倒れ、静かな空間の中にその音がやけに響く…
青ざめた顔をした彼を見て、マリンも顔をしかめる…
「どうしたあるか?」
そっと控え目に問うと、ライナスは扉へと歩み寄りながら小さく答えた。
「何者かが侵入した……多分、闇の者だ……」
「闇の……」
驚いたように呟き、信じられないと眉を寄せる…
「怪我人がいる…少人数じゃない……何十人………否…数え切れない程に………」
マリンと目を合わせる事もなく、何かを確かめるようにそう呟くと、彼はドアノブを掴み、ガチャガチャと何度も回すが…
「クソッ…何で開かねぇんだよ!」
悔しそうに叫び、魔法を使おうとするが、その魔法もすぐさま掻き消されてしまう…

