「…ッ……ハッ………ハァ………ハァ……」
胸を押さえた掌を力強く握り締め、何かに耐えるかのように瞳を閉じる…
その瞬間、溜まっていた小さな雫が耐えきれず、一粒だけ頬を流れて行った…
そんな時…
「レナちゃん!」
自分の名を呼ぶ声がして、閉じていた瞳を開くと、自分に斬りかかろうとする刃物が目に飛び込んできた…
動く事もできず、その刃物を見つめていると…
突然、その視界が遮られる…
そして…
次に瞳に映ったのは…
両手を広げ、胸に刃物の突き刺さった男性の姿…
彼女を庇うように、男性が彼女の前に立ちはだかっていたのだ…
「…ウッ……」
体中傷だらけの男性の顔が、急に歪む…
そして…
その体はゆっくりと倒れて行く…
真っ赤に染まった床に倒れた彼の体からは、大量の血が流れ始め、既に流れていた血溜まりの中へと加わる…
その男性の行動が…
今起きた事が…
あの時の過去に似ていて…
まるであの日にいるようで…
頭の中が混乱してくる…
うっすらとだった過去の記憶が、今度ははっきりと蘇る…
人々の悲鳴が…
何度も鳴り響く銃声が…
辺りに流れる赤い液体が…
そして…
人々を、的のように撃っていた、あの人物の恐ろしい顔が…
はっきりと蘇る…
自分に向けられた、銃口が…
「…嫌……嫌………イヤァァァアァァーー!!」
頭を抱え、身を震わせ叫ぶレナ…
「逃げろ……逃げるんだ……レナ…ちゃん……」
朦朧としている意識の中、精一杯に彼女を助けようとした男性の声さえも、彼女の耳には届いていなかった…
頭を左右に振り、涙を流す彼女の耳には、届かなかった…

