ある治療室の中、茶色い髪を高い位置で1つに結った少女が、椅子にちょこんと腰掛け、どこか一点を見つめていた。
彼女、レナの見つめる先には、ベッドで眠る少女の姿。
少女はゆっくりと呼吸をしながら、スヤスヤと瞳を閉じていた。
微かに悲しそうな色をした、くりっとした瞳。
レナはただ静かに、ベッドの中の人物を見つめていた。
そんな中、部屋の外が騒がしく音を立て始める…
何かが割れる音や、爆発音のような巨大な音…
そして、悲鳴に似た声までも…
不思議に思い、何があったのだろう?と首を傾げながら立ち上がると、そっとドアノブを握る。
少し扉を開き、こっそりと顔を覗かせ廊下を眺めるが、何も変わった所はない…
音をたてずに、恐る恐る部屋を出たレナは、辺りを警戒するようにキョロキョロと見渡しながら、門を曲がる…
横に向けていた視線を前方へと向けた所で、彼女は突然ピタリと動きを止めた。
そして、先程まで悲しそうな色をしていた瞳が、今度は大きく見開かれる…
彼女の瞳の中に映っていたのは…
冷たい床に倒れる、何十人もの研究員と…
不気味に舞う、鋭い刃物…
彼らの体から流れる赤い液体…
宙に浮く鋭い刃物が、1人の人物を斬りつける…
真っ白だったはずの床や壁、天井までもが真っ赤に染まり、そこはまるで、別世界のようだった…
その光景を目にしたレナは、崩れ落ちるかのように、冷たい床へと座り込んだ…
座り込んだ彼女の細い足に、誰が流したかもわからない血液が、ゆっくりと形を変えながら、確実に近づいていた…
今にも零れ落ちそうに、涙を浮かべ、その真っ赤な血液から目を反らす事も、逃げる事もできなかった…
胸を両手で押さえ、苦しそうに息をする…
忘れ去ったはずの過去が…
消してしまいたい忌まわしい過去が…
うっすらと蘇ってくる…
部屋中に響く銃声が…
倒れ行く人々が…
そして…
悲鳴と血の海が…

