「や、止めて…くれ………」


枯れた木々が立ち並ぶ、その荒れた地に、1人の男性が命乞いをするように声を震わせていた…



 「マーガレッド、それ位にしてあげましょうよ。」

 「別にいいじゃん。」


傷だらけの男に馬乗りになりながら、石でできた鎌を首もとに添える、ボーイッシュな女、マーガレッド。

彼女は悪戯に笑いながら、恐怖で脅える男の表情を楽しんでいた…


そんな彼女を呆れたように止めようとする、オレンジ色の髪の女、サラ。

口ではそう言うもの、本当に止める気はないようだ。




 「それは、ここに迷い込んだ無力な人間。貴女が殺す程のような物ではないですよ。」

 「無力ね……でもさ、僕の快楽は“死”だから、さ……」



サラの言葉に聞く耳を持たないマーガレッドは、手にした鎌を高く持ち上げると共に口角を上げ、目にも留まらぬ速さで振り落とす…




 「う"あ"ぁぁあぁーーー!!」


荒れ果てたその地の中、男の断末魔の叫び声が響き、血に染まった鳥達が、枯れた木々から飛び立った…






 「サラの快楽、何だっけ?“愛”?」


血の付いた鎌を投げ捨て、頬に付いた返り血を拭いながら、問うマーガレッド…



投げ捨てた鎌は、赤く染まった石へと姿を変える…


その石を見つめ、顎に人差し指を添え、少し考えるような素振りを見せたサラは、マーガレッドの問いに答える…


 「“愛”ですか……そうともいえますが……私の本当の快楽は…“操”ですね。」

いつもの穏やかで、落ち着いた様子の彼女の表情とは思えない、鋭い、何か棘を持つようなそんな目をしたサラ…

その瞳は、決してヴェインに向けられる事はない…




そんな彼女の瞳を面白そうに見つめ、マーガレッドは歩き出す…


 「“操”ね………そっか。サラの能力はーーだからね。」


マーガレッドの言葉は、強く吹いた風でかき消され…


それと共に、霧に包まれた2人の姿は、その場から消えていた…


血に染まった鳥達は木に舞い戻り、鋭く血に飢えた瞳を輝かせる…

何事もなかったかのように、時が過ぎようとしていた…