屋上へと続く緩やかな階段。
その階段を一段一段登って行くにつれ、小さな光が大きくなって行く。
そして、暖かな温もりが自らの体を包み込む。
最後の一段を登り終えると、目の前に現れた少し古びた扉。
小さな隙間から、冷たい風が吹き抜け、太陽の光が零れ出る。
軋む音を響かせながら、その扉を開くと、眩い光が差し込んできた。
目を開けていられないようなその輝きに、腕で顔を覆いながら、外に出る。
悪戯な風が彼の髪を揺らし、陽の光が肌を照らす。
その場所は、どこか心地いい、夏の匂いがした…
新鮮な空気を鼻で吸い、ゆっくりと口から吐く…
全身に綺麗な空気が巡り、心の中にあったモヤモヤが、どこかに消えて行く…
何もかもを忘れてしまうような、そんな気持ちになるこの屋上に、寝転んでしまいたくなる…
だが、深呼吸をし、ゆっくりと目を開けると、その瞳に何かが映った。
眩い光に目が慣れていない為、はっきりとした事はわからないが、人影のようだ。
目を細め、何者かと確認しようとするシュウ。
目が、だんだん光に慣れてくる。
手すりを握り、屋上から見える景色を眺めるその人物。
その人物は、背後に何か違和感を感じたのか、シュウに気づいたようで、こちらに振り向く。
風に靡く、ウェーブのかかった茶色の髪…
少し腫れた赤い目をした小柄な少女…
「ルリ…?」
そこにいたのは、彼のよく知る人物、ルリであった。
彼女は名を呼ばれると、髪を踊らせながらニコッと微笑む。
彼女の笑顔を目にし、自らも微笑みながら、彼女の隣に並ぶ。
手すりに手を添え、煌めく太陽の光と、清らかな風を浴びながら、どこか遠くを見つめた。
目を瞑れば、木々のざわめきが…
耳を澄ませば、川のせせらぎが…
心の底から洗い流されて、心を落ち着かせていると…
「長から、全て聞いた…」
シュウの隣で、彼と同じように遠くを見つめるルリは、唐突に口を開いた…

