一段一段、階段を下りて行く…
壁に掛けられた数本のロウソクが、足下を照らす…
夏だというのに、ひんやりとした風が肌をかすめる…
「父が作ったの…」
少女の後ろ姿を追いながら、辺りを見回していたシュウに、少女は話しかける。
「父だけの場所…」
「君は、入っていいのか…?」
さぁ…と言う風に首を傾げ、少女はシュウに目を向けた。
「?」
突然立ち止まり、どうしたのか…
少し心配に思っていたが…
「私の名前はルリ。」
少女は名を名乗った。
君。と言う言葉が気に入らなかったらしい…
こんな時に…
唖然とするシュウ。
しかし、顔には出さずに、彼女の名を呼んでみた。
「ルリ?」
確か、アスカもそう呼んでいた。
彼女の名はルリと言うらしい。
シュウの声に、笑顔で答えるルリ。
「えぇ。今、似合わないって思ったでしょ?」
「いや…」
「いいのよ。そうなんだから…」
何かあったような口ぶり…
しかし、その時は、何も気にしなかった…
これからどうなるのかも知らなかったから…
彼女と関わる事はないと思っていたから…

