BLACKNESS DRAGON ~希望という名の光~


顔を伏せるライナス…

息をしているのかもわからないそんな状態の彼…

意識があるとは思えない…



 「フンッ…無意識か…」

そう判断したローラン
だが…



 「!?」

掴まれた手首に感じる熱…

焼けるような、ジリジリとした熱が伝わる…

そして、そこから湯気が…



 「なっ!?」


自らの冷たい血へと流れる熱い何か…

その流れ来る何かを恐れ、とっさに手を振り解くと、2・3歩程後退する…


何が起こったのかと、掴まれた手首を見ると…


血の気のない青白い肌に浮かぶ赤い線…

冷たい風に当たり、ヒリヒリと痛みが伝わった…



その熱い物に触れたかのような火傷の痕…


目を細めながら見つめると、壁に張り付けられるライナスへと目をやる…




 「……」


そこには、何かを企むように笑いながら、ボソボソと呪文のようなものを唱える彼の姿があった…




何をしたと言う…

魔法は使えない筈…

全ての血は十字に…

闇に落ちた筈…

何をしている…



有り得ない事が起こり、動揺するローラン。

何もする事ができず、ただただ何か行動を起こそうとしているライナスを見つめる事しかできなかった…



 「『精霊達よ、我に力を与えるならば、我を縛る敵から我を助けよ!』」


彼の側から離れていた精霊達…

その精霊達に助けを求めるライナス…

彼は、離れていながらも、消える事のない精霊達を信じていた…

自分を、見捨てるはずはないと…



その気持ちが伝わったのだろうか…?


両手を縛る左右の触手が燃え、鋭い刃を持った風が傷をつけて行く…

そして、首を掴む赤黒い触手は、水が全体を包み、粉々に爆発させた…


触手達は、音にならない悲鳴を上げる…




 「約束したんだ…」


体が自由になったライナスは、怪我を負った足を庇いながら地面に着地し、ローランを睨む…



 「あいつの目を治してやる事を…」


一歩一歩ゆっくりとローランに近づく…