「…ハァ……ハァ……」
荒れる息…
揺れる視界…
壁へと張り付けられたライナスは、彼に近寄るローランを睨む事しかできなかった…
3本の触手は、ライナスが身動きを取れないように縛り付けるが…
彼は抵抗する気力すら残っておらず、反抗する事もなかった…
「死にたくないんだろ?」
「っ!?」
目の前で立ち止まり、そう囁くローラン。
その言葉に一瞬目を見開き、ローランを見つめる。
「死にたくないんだろ?」
もう一度繰り返す。
彼の返事を待つかのように何度も囁いた…
確かに、死にたくない…
生きて帰りたい…
生きて、カルーアに合いたい…
目を伏せるライナスを見て、ローランは何かを企むように笑うと、再び口を開く…
「だったら、闇に落ちろ。」
「!?」
今度は、驚いたように目を見開く…
闇に、落ちる…
闇に、生きる…
「闇に落ちれば、この世に生き続ける事ができる。死ぬ事はない。」
死ぬ事はない…
その言葉だけが頭に響いた…
生きたい…
闇に落ちれば、生きられる…
闇に落ちれば…
無言のライナスを見て、ローランは彼の頬に手を伸ばした…
「闇に、落ちろ…」
彼の頬に人差し指をつけると、ゆっくりと傷をつけていく…
ローランの触った所が、赤黒く光っていた…
「クッ……」
頬から体中に伝わる不思議な痛み…
その痛みに耐え、片目を瞑りながらローランを睨んだ…
「安心しろ。すぐに終わる。」
そう囁くと、頬に傷をつける指を止めた…
ライナスの頬から指を離すと、ニャッと笑う…
ライナスの頬には…
サロウと同じように、十字のマークが刻まれていた…
赤黒く光るその十字のマーク…
その光は、体中の血を吸い取るようだった…
「さぁ、我が仲間に…」
ライナスの顔に指を近づけ、パチンと指を鳴らした…
すると…
「ぅっ…!」
全身に走る激痛…
体中から血が無くなるような感覚…

