場所は変わり、とある家々の立ち並ぶ地へ。
霧が漂うその地には、1人の少年が壁に身を預け、足を伸ばした状態で座っていた。
微かに吹いた風が彼の紺色の髪を揺らし、髪と同じ色の瞳は、どこかを真剣に見つめていた…
昼間はあんなに賑やかだったこの地。
夜になると皆引き上げ、家々へと帰って行った。
道には、誰1人として人の姿はなかった。
「シュウ。」
「?…ルリ。」
突然名を呼ばれ、振り返る彼、シュウは、背後に立つ少女を見つめた。
何者かを待つような彼の背後から、近づく足音さえも、彼は気づかなかったようだ。
茶色の髪に、毛先に緩くウェーブのかかった彼女、ルリは、名を呼ばれ、ニコッと微笑むと、彼の横に立つ。
「横、座ってもいい?」
可愛らしく首を傾げ、訊くルリ。
そんなルリににこやかに微笑み頷くと、横に移動し、場所を空けた。
「どうした?」
隣に腰かけたルリに訊くと、ルリは真っ直ぐ前を向き、答える。
「いてもたってもいられなくて。」
「そぉか。マリンは?」
シュウも彼女と同じ。
どこか落ち着けず、ここにきたのだ。
「マリンは、部屋にいるわ。ウロウロしてて、見てられなくて…」
クスッと笑うルリ。
いてもたってもいられないのは、皆同じ事なのだ。
「ライナス、戻って来てくれるよね…」
先程の笑顔は消え、悩むようにそう言葉を漏らす。
すると…
「戻って来るさ。必ず。俺はあいつを、ライナスを、信じるから。」
強い意志の籠もった瞳…
その瞳はどこか輝いていて…
隣に座る彼女の心を締め付ける…
「!?」
ふと触れた彼女の小さな掌…
ルリはシュウの頬に手を添えると、ジッとその輝く瞳を見つめた。
突然の事に驚くシュウ。
すぐ近くにある彼女の顔に、密かにドキッとしながらも、彼女の茶色い瞳を見つめる…
仄かに頬を赤く染めながら…

