膝を付き、両手を前に付くライナスは、怯えるような瞳を地面へと向けていた…
水で潤んだ茶色い土…
その色が、赤く染まって行く…
「…ハァ……ハァ……」
息を荒げるライナス。
バリッ…
突然地が揺れた…
微かに、わからないような小さな揺れ…
そして、何かが避けるような音…
その音と共にひびの生える地面…
バリバリッ…
彼が見つめる地面から、赤黒い触手が姿を表す…
ライナスの血をその手につけた触手…
「っ!…ぅっ…!?」
その触手はライナスの首を掴み、彼を後ろへと押す…
人間の物ではないその力…
思考の停止していたライナスは、何の抵抗もできず、彼の体は宙に浮いた…
フワッと浮いた体…
頬を掠める涼やかな風…
太股から流れる赤い滴は地面へと流れ落ち…
赤い血溜まりの中に溶け込んでいった…
「クッ…!」
自分の置かれている状況を、停止する頭で何とか判断し、首を掴む触手へと両手を持って行こうとするが…
「っ…!」
その腕は、触手に触れる事も、掠める事もできなかった…
伸ばした腕はどこからかやって来た2本の触手が巻き付き、身動きを取れないように、左右に縛られる…
首と両手を縛る触手…
身動きの取れないライナスは、そのままある家の白い壁へとぶつけられた…
「クッ…」
背中から勢い良くぶつかったライナスは、苦痛に顔を歪めながらも、彼に近づいて来る人物を睨んでいた…
壁に貼り付けられた状態のライナス…
身動きも取れず、思考もついていかない…
為す術を無くした彼…
そんな彼を悪戯に笑いながら見つめるローラン…
ライナスはどうなるのか…
そしつ、ローランは何を考えているのか…
ライナスから距離を置く精霊達は、何かを察知したのか、怯え、震えていた…

