魔法を使うには、精霊達の力を借りる。
すぐ側にいるはずの精霊達…
だが、その精霊達は、ライナスから避けるように距離をとっていた…
「どう…して…」
精霊達に手を伸ばすが、彼等はその手から逃れる…
彼から顔を背け、魔法使いであるライナスの目から消えようとしていた…
どうして…
どうして…
魔法が使えない…
精霊達が、俺を拒んでいる…
魔法使いである事を、拒んでいる…
「どうした?魔法は使えるようになったか?」
「……」
「精霊に嫌われるってのは辛いな。魔法使いとして。」
「クッ…黙れ!」
頭の中が混乱して、何が何だかわからない…
彼は、無意識に叫ぶと、ローランに武器もなしに立ち向かって行った。
ローランの顔目掛けて拳を振るう。
だが…
「おっと…魔法を使えない魔法使いに何ができる?」
容易く交わされた攻撃…
身軽に跳ねつと、ライナスを嘲笑う…
「黙れ!黙れ!黙れー!!」
「ハッ…お前にはサロウで十分だ。」
頭に血の昇っているライナスは、力任せに拳を振るう。
当たりもしない、その攻撃を…
何度も、何度も…
遊んでいるかのようにライナスの攻撃を交わしながら、ローランは右手を挙げ、パチンッと指を鳴らした。
音と共に、どこからか現れた触手…
ライナスの顔目掛けやってくる…
「チッ……」
ローランの顔面を殴ろうと前進したライナスであったが、目の端に映った触手。
その攻撃を交わすべく、舌打ちをしながら身を退いた…
後ろに見を退くライナスを眺めるローランは、腕を組、余裕そうに笑っていて…
「ク…ソッ……」
息切れするライナスは、彼を睨みつけるのだった…
目前の敵、ローランを睨みながら、辺りへと目をやるライナス…
攻撃を仕掛けてきた、サロウの姿を探しているのだ。
どこにもいない…
見えるのは、触手のみ…
サロウ本体の体がどこにも見当たらない…

