BLACKNESS DRAGON ~希望という名の光~

押さえる手が赤く染まる…


キョロキョロと辺りを見回し、敵を探す…


だが、周りには何の気配もない…

あるのは、先程から流れ続ける噴水と、左右に立ち並ぶ家々のみ…

どこにも敵の姿はない…


どこに…

脈を打つように痛みが増してくる…



 「ぅっ…!」

脇腹に走る痛み…

そこは既に赤く染まっていた…

ドクドクと流れる赤い血…

服のシミを広げていく…



どこに…

どこにいる…



見えない敵…

いや、彼が気づかないだけなのか…


彼は腕を胸の前で組むと、静かに目を瞑る…


 「『全ての空間を漂いし風よ、我にその目を貸さん……』」


どこからか吹いてきた風が、バタバタと彼の服を揺らす。

敵の居場所を掴む為、魔法を構成するライナス。


パッと目を見開くと、彼の瞳は水色に変わっていた。

風の目を借りたのだ。

だが…


 「!?」

その瞳は、一瞬にして元の色に変わった。

どうして…

目を見開き、驚くライナス。

オロオロと瞳を揺らす…



 「魔力が乱れてるぞ。」

突然聞こえた何者かの声…

霧の中から現れた人物…


黄色い色をした左の瞳…
とがった右耳に丸いピアスを2つ…

そして、血の気のない青白い肌…


 「闇の…者…」

あの血の気のない肌は、紛れもなく、闇の者…

ライナスの言葉に、彼、ローランはニャッと笑う。



 「『水の精霊よ、我が右手にその力を…』」

ローランを睨むライナスは、右手を横に伸ばし、掌に水の塊を作る。

が…


 「っ!?」

その水の塊が音を立てて弾け、周りに滴として飛び散った。


先程から魔法が使えない…

どうして…

動揺するライナス。


滴のついた掌を胸の前に握る。



 「精霊に嫌われたか?」

 「嫌われ、た…?」


ローランのその言葉に、ライナスは辺りを見回す。


心を落ち着かせ、人間には見えない精霊達の姿を探す。