その顔を見えた瞬間、俺の中の何かが反応し、胸を騒がされた…
小柄な、ウェーブのかかった長い髪…
長い睫に茶色い瞳…
その顔は、よく知る者の顔…
「ルリ?!」
「え?」
思わず俺は名を呼んでしまった。
その声が聞こえたらしく、彼女はこちらを目を細めながら見つめる…
やっぱり、ルリだ。
こんな所で…
こんな時間に…
1人で…
何を…
「…シュウ?」
「あ、あぁ…」
こちらを確認したらしく、ルリは剣を鞘に収め、歩いてくる。
暗くて、足下の見えないこの地を…
そして、雨で濡れた、足場の悪いこの地を…
「!キャッ!」
「危ねっ!」
足を取られ、バランスを崩すと、前のめりに倒れて行く…
それに気づき、飛び出すシュウ。
上手くルリを受け止めた。
胸に収まる程の小さなルリ。
受け止めた為、抱き締めていたが、ハッとして、手を離す。
が…
ルリは顔を胸に埋めたまま、離れようとはしない。
時折見せる、彼女のそんな甘えた姿が、男性の心を鷲掴みにしている事を、彼女は知ってるのだろうか…?
シュウは動揺しているようだった
先程踊っているようだった彼女が…
見とれてしまっていた彼女が…
こんなに近くにいて…
何だか胸がドキドキして…
どうしたらいいのかわからなかった…
目を右左に動かしていると…
「温かい……」
「?……」
顔を埋めるルリが、そう囁いた。
そして、顔を上げずに話し出す。
「どうして、人々はこの温もりを捨ててまで……冷たい血を選び……憎しみを抱くのかな……」
「……」
「こんなにも、温かいのに……どうして………ぇっ!」
「……」
シュウは、無言でルリを抱きしめていた。
力強く…
しっかりと…
彼女の心の中に宿る、恐怖の闇を消し去るように…

