いい意味で

どんどん待ち合わせの場所に近づいていく。
楽しそうな若菜さんをネオンが照らしていく。

不意に若菜さんの手と僕の手がぶつかった。

もういいや。酔いのせいにしよう。
僕はその手を繋いだ。

こっちを観る若菜さんは無言で笑顔を浮かべ、繋がった僕等の手を
子供のお散歩の様に、大きく振り始めた。

言葉はなかったけれど、嬉しかった。

待ち合わせ場所についた。
大きい袋を片手に、智久は待っている。
電話では、ついに作曲用の新しい機材を買ったと言っていた。

智久をみつけ、僕はわざとHIPHOPっぽい仕草で智久に手をあげる
これをやると智久は大体笑うから、時々こうやるんだ。

「こんちはぁ。初めまして!」智久は若菜さんに挨拶する。

兄弟として初めて見る大体の人が、僕と智久は似てないと言う。本当に兄弟?!って言ってくる。
僕的には、結構失礼な事を言われてる気分がするんだ。もう慣れたけど。
一応、心ではその準備をする。

「初めまして!若菜です!!おお!やっぱ似てますね!!さすが兄弟だ!」
その一言で、僕は嬉しくなる。逆に「そうすかぁ?」なんて言ってみせる。
そうだよ。僕等は兄弟さ。

なんとなく心は浮かぶ。色々話しながら三人で、みんなが待つ飲み屋に向かう。

今日智久は、新しいサンプラーを買ったらしい。
ヒップホップでは「サンプリング」という、他の人の曲を切って貼ったりして、
パズルのように曲を組み合わせて作っていく手法がある。
それをやるための機械だ。僕等が今持っているのでは足らなくて
新しいのにしたんだ。

僕等は、「また新しい感じのができそうだねぇ。」なんていっていた。
若菜さんは、僕がラッパーだということを知って驚いていた。
そりゃそうだ。僕はB-BOYのような格好はしていないし
服装も派手じゃない。無名だし華も無い。音楽やってる感じには見えないだろう。

今度聴かせますね。なんて言ったら喜んでいる。
いちいちいい子だな。若菜さんは。