『……羽優…』 声が聞こえる… まるで愛おしむように誰かの名前を呼ぶ声が… 『…羽優……』 でもこれは…… あたしを呼んでいるようにも聞こえる。 『…行くな…頼むからっ!!』 必死に誰かがあたしに手を伸ばす。あたしもこの手を掴みたい…掴んでしまいたいと思った。 でも掴んではいけないと… 甘えてはいけないと…そう思ったから… あたしはそのまま…… そのまま……? そこでハッとして目を開ける。何だ…今の……。 「何か見えたのですかっ!?」 家臣が身を乗り出してあたしの顔を覗き込んだ。