先見の巫女



―バタンッ


「行ってしまったようだね…」


晴明はうっすらと茜色に染まる空を見上げる。


まるで…朱雀君のようだ。彼が…雛菊を包み込んでくれますように…


私では護れない…あの子の心が…


癒されますように……


「そう思うでしょう…?扇凜白虎……」


晴明は自らの持つ金ぶちの白い扇に語りかける。


すると、扇は金色に輝き出した。


『…晴明……。もう迷いは無いのだな?』

「…もちろんだよ…。私はこの世より我が子の方が何十倍も愛しいのだから…」


たとえ京を滅ぼす事になっても…
犠牲の上に成り立つ平穏など…


一時の幸福でしかない。そしてまた…


災厄は訪れ、また犠牲を払うの繰り返し。


もうあの子が傷付く必要なんか無いのだ。


『お前の誠の願い…聞き入れた。我はお前と共に…』

声と共に光が消えてゆく。晴明は小さな笑みを浮かべ、まだ茜色に染まる空を見上げた。