先見の巫女



『羽優は…あの時、人間からどんなに酷い仕打ちを受けようと、あぁしていた。あの娘が守ろうとしたモノを我は守ろうとする事すれ、壊そうとは思わん』

『何故だ!!お前とて同じであろう!?翡翠龍!!』


また我を失った桜鬼に、翡翠龍は光を放った。


『桜鬼よ…もう一度思い出すがよい…。お前が望んでいたモノを……』


その瞬間ー…
桜鬼は、楓と過ごした幸せで尊い時間を見た。


走馬灯のように駆け巡る幸せな記憶…


『我は…楓を取り戻したかった…二人で築く未来を…望んでいたのだ…』


ただ普通の幸せを望んでいただけだったのに…


それすらも叶わなかった…運命の残酷さ…


『もう一度…お前をこの腕の中に抱きたい…』


涙を流し桜鬼は呟いた。


―チリン…


鈴が静かな音を立てる。桜鬼は目を見開いた。


目の前に、望みに望んだ愛しい人の姿があったから…