「晴明様、妻を迎える気は無いのですか?」
唐突に質問するあたしを、晴明様は不思議そうに見つめる。
「晴明様もいいお歳です。私ももう18になりましたし、晴明様は晴明様の幸せを見つけていいのでは?」
時折不安だった。あたしが晴明様にとって、邪魔な存在なんじゃないかって…
「私はね、今こうして雛菊と暮らしている事、同じ時間を生きている事が幸せだと思うのだよ」
ほら…そう言って優しく笑う。晴明様はそういう人なんだ。優しくて…他者の痛みに敏感なんだ…
「晴明様…私は幸せ過ぎて恐いです。いつか…いつかこの幸せが終わってしまうんじゃないかって…」
全ての事柄には始まりがあり、必ず終わりがある。
「なら…また始めればいい。私は何度でも雛菊を娘として大切にするよ」
晴明様は優しく抱きしめてくれる。優しくて温かい…家族の温もりを…あたしは一生忘れたくない。
「雛菊、そろそろ着くみたいだ」
晴明様の声と同時に、牛車が止まる。晴明様と一緒に地上へと足を付けた。


