「晴明様…これは…?」
晴明様の手の中にある二つの鈴を見ながら尋ねる。
「依りの鈴だよ。鈴の音一つで想った者の魂を呼び寄せる鈴…」
想った者の魂を……
じゃあ…
「桜鬼の愛した人の魂と引き合わせられるんですか?」
二人の離れてしまった魂をもう一度…
「だがそれには雛菊、あなたの中にいる翡翠龍の力が必要なんだ」
「翡翠…龍の…ですか…?」
不思議そうに言うあたしに、晴明様は頷いてみせた。
「翡翠龍は時を翔ける天海の龍だからね。翡翠龍の力で、とうの昔に失われた桜鬼の女の魂を呼び寄せなければならない」
翡翠龍にはそれが出来るんだ…
「無理にとは言わないよ。翡翠龍を降ろすのは相当体に無理をさせる事になるからね」
翡翠龍を降ろす…
前に一度、翡翠龍をこの身に降ろした事があった。
翡翠龍の神力は、人の体には到底収まりきらない。
あたしの体は生命を維持する限界までボロボロになってしまったのだ。


