先見の巫女



「どうしたの、翠」


儀を終えた日から数週間、翠の様子がおかしい。


何というか…
私と目を合わせなくなった。


「…何もありません」


まただ…
また目を合わせない。


翠の事だもの。
また何か一人で思い詰めているのだろう。


ここ数月で翠の事が少し分かってきた気がする。


人に頼る事を知らない…
優しく不器用な人だ。


「翠…またあなたは…
そんな顔をして…」


翠の悲しげな顔に手を伸ばす。翠は目を見開いた。


理由は恐らく…
私の右手が翠の頬に添えられているから…


「人は一人では生きていけないわ。
それは神も同じ…
私達だってずっとあなたの傍にいられる分けでは無いのだから…」



そのまま翠を優しく抱きしめる。温もり…人の温かさを知ってほしい…


「今から人に甘える事を知りなさい。
ね?翠…」


そう言えば翠は嬉しいような悲しいような曖昧な表情を浮かべた。


「約束よ」


そう笑顔を向けると、翠は俯いてしまった。


「…翠……?」


顔を覗き込もうとした瞬間…
唇に柔らかい温もりを感じた。強く強く押し当てるような感覚…


これは……


口づけ……?


思考が停止する。
混乱する私の意思とは関係無しに翠は唇を奪う。