「…あ…いえ…。すみません、もう一度…」
きっと…また何か無意識に見てしまったのだろう。きっとあたしには関係ない。
そう自分に言い聞かせてもう一度瞳を閉じた。
そうすると一気に現実世界から遠退いていく感覚に捕われる。
あたしはゆっくりと瞳を開いた。
先見をする時、過去見をする時にあたしの瞳は髪と同じ栗色の瞳から翡翠色に輝く。
あたしは目を開けていても晴明様達の姿は見えず、もっと遠くの世界を見ている。
目の前に広がるのは…魑魅魍魎の影。生気の失われた人間達の死骸……それから……
朱髪の…青年…
青年は誰かを背に庇い何かを叫んでいた。
『…頼むから…自…犠牲…な!!』
え…?何て言ったの?
ねぇ…聞こえないよ!!


