「では巧君を自由にさせるのがよいと思いますか?」

声が話し掛けてくる

「巧君が今のまま以前の生活に戻れば確実に感染者が出ます
感染者は確実に死亡しますそれでもよいと思われますか?」

「そんな事・・!」

良いわけないじゃない!

だけど・・だけど・・!

正しい事はわかってる

巧が隔離される事が1番な方法だということも

もし感染源が巧ではなく他の人間なら隔離するべきだと素直に思うだろう

その感染源の人が一生隔離されモルモットみたいな扱いを受けても気の毒には思うがそれが当たり前だと思うだろう

運が悪かった

同情するがそう思って終わるだろう

何も考えずに・・
その人の事など・・・

「辛い決断でしょうが・・」
「待って!待って下さい!」
「・・・」

「私も感染者なんですよね?」

「そうですね・・発症は個人差があるのでなんとも言えませんが・・」

「私が発症したら巧はこの部屋で一人ぼっちって事・・ですか?」

「・・そうなります」

声の答えに絶句する

私が死んだらこの部屋で巧は一人ぼっちに・・・

堪えられるのだろうか?
大人でも堪えられないかもしれないのに
あの子が堪えられるのだろうか?・・・

たった五歳の子供が一人きりで孤独に堪える事などできるはずがない

だけどどうする事もできない

私は無力な母親だ

私が死んだら巧は一人で壊れていくだろう

私何もしてあげられない

溢れ出る涙が止まらない