「いやぁ…しかし俺を見える奴がいるとは不思議やなぁ…」


悲しむ俺の前で袴男は台帳を見つめ、1人でぶつぶつ喋り続けていた。


『…………』


込み上げる悲しみと後悔に涙を流しながら


俺は空中にいる袴男を見上げた。


金髪関西弁の胡散臭い男だけど


多分、神にすがるとしたら


この男が最後で唯一の頼みの綱だと思った。




『あんた…何とかしてくれよ』


「んあ?な…なんやて?」


いきなりの俺の問いかけに袴男は慌てて台帳から顔を上げた。


『頼むから…美代の命を何とか助けてくれ…』


「…へ……?」


『頼むよ…本当に頼む!』


「……………」


『その為なら俺はどうなってもいいから…!!』


泣きながらすがる俺に袴男は初めて真面目な目を向けた。


「あのな~君、そんなん簡単に言うけど。ほんまに君はどうなってもええんか?」


『ああ…美代が助かるなら!』


「………」


折れない俺に袴男は小さくため息をつきながら頭をかいた。