この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐

『は……デート?』


俺も一緒になって顔をあげる。


コイツ…何ふざけたこと言ってんだ?!


だけど男は至って真面目に繰り返す。


「うん。美代ちゃんデートしてくれ」


「ええ?いやぁ、でも…」


「前も断られたけどよ…うさぎに優しくすんなら俺にも…優しくしてくれよ」


どうやらコイツは過去に一度、美代にデートを断られているらしい。


なのにしつこく言い寄るコイツに俺はより一層の危険さを感じた。


「デートしてみなきゃ…良いか悪いかも分かんねぇじゃん?」


「だ…だって…アキラ先輩、本気じゃないですよね?」


「なんでそう思うんだ?」


「だって私みたいな田舎っぺ…アキラ先輩オシャレだし」


「美代ちゃんのが可愛いって」


「いやいや~……」


ジリジリ近寄る男に


美代はたまらず逃げるように俯いた。


そんな美代の顎に男の手がふれ美代はそのままゆっくりと顎を持ち上げられた。


「本気だよ、俺…信じてももらえねぇのかな?」


「っ………」


男のあからさまな悲しい表情に単純な美代の心は少なからず揺れたようだ。


男はそれを見逃さない。


そのまま美代にゆっくりと顔を近けた。