この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐

「ん?なんだ、アキラもか。他にはもういないよな?」


「他は全員参加みたいよ」


副部長の声で


部長は居酒屋に予約の電話をかけ始めた。


これから始まる打ち上げに、ざわめく大学生たち。


そんな中で


「じゃあ美代ちゃん、帰ろっか?」


あの男がさも当たり前という風に美代に近寄ってきた。


「え?アキラ先輩は用事じゃないんですか?」


驚く美代。


そんな美代の手を強引に取ると男は小さく笑った。


「そんなん口実だよ。誰かが美代ちゃんを送らなきゃ」


「え~?いやいやぁ、まだ明るいですし徒歩10分ですよ?!」


「まぁまぁ、いいからさ」


男はまた笑うとそのまま強引に歩き出した。


「えぇ~…??」


腕を捕まれた美代も引っ張られるように歩き出す。


『おい!お前離れろ!』


俺はバッグの中から顔だけ出して叫んだ。


「美代ちゃんには介抱した時の借りがあるし。家まで送るくらい許してよ」


「え~それ変ですよ。借りがあるなら私が先輩に何かを返さなきゃいけないのに」


「あれ?そっか」


「これじゃ借りが増えちゃいますよ」


「いいよ、気にしなくて」


「う~ん…」


結局、美代は煮え切らないまま
半ば強引に男と一緒に帰ることになった。