この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐

福祉活動が終わり、挨拶をして俺たちは老人ホームを後にした。


辺りはまだ明るいが時刻は16時を過ぎている。


「今日は結構ウケてたな」


「うふふ、お疲れさま。美代ちゃんのうさぎも良かったんじゃない?」


「うるさいな…///最初は怒鳴って悪かったよ」


「んも~私じゃなくて美代ちゃんに謝ってあげなさいよ?」


部長と部長の横にいる女子大生がこっそりこんなやり取りをしているのが耳に入った。


美代や他の者には聞こえてないらしいが…


うさぎの俺にはどうしても聞こえてしまう。


部長の横にいる女子大生は副部長らしいが


どうやらそれだけの関係ではなさそうだ。


そして部長が美代のところへやってきた。


「美代」


「は…はい!」


「怒鳴ったのは悪かったが…これからはいきなり動物を連れてくるのは止めてくれ」


「はい…すみませんでした!」


「あと遅刻も気をつけて」


「はい。気をつけます!」


「うん。頼むよ」


部長は眼鏡を持ち上げると美代に短く微笑んだ。