この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐

『~~~っ』


俺は女子大生の腕に抱き締められたまま、とりあえず男を監視した。


何かあったらこの女子大生の腕に噛みついてでも抜け出さなければ…


しかし俺の心配とは裏腹に、


どうやら男はただ部長に怒られた美代を慰めているようだった。


さすがに人のいる前ではおかしな気は起こさないらしい。


とりあえず少しホッとする俺。


「うさぎの許可がおりたから、みんな入ってくれ」


戻ってきた部長の合図で全員、施設内に入った。


俺はようやく美代の腕の中に戻った。


そしてまだ美代の隣にいる例の男を威嚇する。


「やだマサルさん、どうしたの?」


「はは、なんか俺うさぎさんに嫌われたか?」


男は顎の髭をさわりながら苦笑いした。


『テメ~美代が覚えてなくても俺がしっかり覚えてんだからな』


「すみません、アキラ先輩…なんかマサルさん今日ずっとこんな調子で」


「あ~いや、いいよ。なんか俺あんま動物に好かれねぇんだよな、昔から」


そんな事を言いながら


男は笑えないエピソードを笑いながら美代に自慢し始めた。


猫に引っ掻かれたことや鳥に糞を落とされたことを武勇伝さながらに話す男。


こいつ…バカだろ