「さっさと乗れ」




男は俺と美代をセスナ機に無理やり乗せると自分は操縦席の横に乗り込んだ。


10人程が乗れそうな機内には、すでに武装集団も乗り込んでいた。


完全に定員オーバーな機内。


覆面をつけていた男たちはセスナの中で覆面をはずし始めた。


「くそっ…全身傷だらけで汗がしみる!」


「俺なんかネズミのせいで後頭部の毛が無くなった!!」


真夏の狭い機内の中は、男たちの汗が蒸気になり充満していた。


汗に火薬に砂ぼこりの匂い。


俺と美代もどろどろになりながら、機内の隅で身を寄せていた。


「おい!パイロットはまだ来ないのか!」


前方から指名手配の男が苛立った声で叫んだ。


ただでさえ蒸し暑さで苛立つ機内。


指名手配の男は苛立ちと汗で髪を逆立てていた。