この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐

「マサルさん」


ふいに背中から呼ばる。


「ん?」


俺が振り返ると、風呂上がりの美代が立っていた。


「隣いい?」


「あぁ、もちろん良いぞ」


濡れた髪に肩からタオルをさげた美代は俺の隣に座った。



漆黒の空に輝く星と丸い月。


美代の長い髪からシャンプーの香りがした。


「おい美代…髪、渇かさないと風邪ひくぞ」


俺は少しドキドキしながらそう言った。



「マサルさんも濡れたままじゃん」


「…俺は短いから良いんだよ」


「えぇ~私だってめんどくさいも―ん」


美代はそう言うと


そのまま体を仰向けに倒した。


俺の隣で無防備に寝る美代は、縁側から出した足をぷらぷら揺らす。


こらこら…


「無防備すぎるぞ」


俺は美代を叱った。


「ふふふ、大丈夫だもん。マサルさんがついてるもん」


「あのなぁ…」


「それに」


美代は寝たままの姿勢で顔だけを俺に向けた。


―――ん?


俺が首を傾げると


美代は顔をこちらに向けたまま視線だけを少し反らした。


月明かりに照された美代の瞳が少し潤み、頬が染まる。



「こうしてたら、またマサルさんがキスしてくれるかもしれないもん」