この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐

そもそも…


伸太郎はどうして俺がマサルだと知ってるんだろう?


「ん?」


俺の視線に気付いた伸太郎が、どら焼をほお張りながら俺を見た。


「いや…あの、」


俺はなんとなく言葉を濁す。


そんな俺に伸太郎は言う。


「マサル。約束を守ってくれてありがとうな」


「え…?」


「マサルなら守ってくれると思ってたぞ」


「………?」


伸太郎との…約束?


首をかしげる俺に


伸太郎はもうひとつ、どら焼の包みをあけながら


「ほら、美代とお前を都会に送り出す前によ、約束してくれたじゃねぇか」


送り出す前…?


俺はどら焼をもりもり食べる伸太郎を見つめながら、その頃の記憶を辿って行った。