この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐

ブロロン…プス


荒いエンジン音と振動がやみ、軽トラックが柵の隣に停められた。


車を降りる俺たち。


そして伸太郎がさっそく柵の鍵を外すと、中から動物たちがわらわら出てきた。


『あんれま~美代ちゃんが帰ってきてるやないの』


雌鳥(めんどり)の奈津子がコッコッと鳴きながら俺たちを見た。


奈津子の産む卵は濃厚で旨い。


「よぉ、奈津子。久しぶりだな」


俺はボストンバックを土の上に置くと、奈津子と目線を合わすようにしゃがみこんだ。


『コケッ!?あんれま~お兄さん人間やのに私と喋れるのかい?』


奈津子は目を丸くさせる。


くっくっく…


期待通りの奈津子のびっくり顔に、俺は思わず笑みがこぼれてしまう。


「奈津子、俺はマサルだぞ。うさぎのマサルだ」


俺の言葉に奈津子は丸い目をさらに丸くさせる。


「コッコケ?!あんたあのうさぎの…マ、マサルちゃんなの!?」


「そうだ。驚いたか?」


「そりゃ…あんた…え、えぇ~?!」


奈津子は驚きのあまり、コケコッコーと叫びながら卵をひとつ産み落とした。