この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐

万緑が生い茂る山道を走ること一時間。


軽トラックはようやく美代の家の近くまでやって来た。


深い山あいのこの場所は、真夏でも涼しい。


木々が生い茂った山道を抜けると、懐かしい畑が見えてきた。


この畑は伸太郎が開墾し、耕しているものだ。


うさぎだった頃の俺も、よく伸太郎の収穫に付き合った。


この時期はトマトやキュウリ、ナスやニラが主に収穫出来る。


伸太郎は米も作っていて、生活のほとんどを自給自足でやっていた。


畑を過ぎると大きな木の柵が見えた。


あの中には豚の太郎もいるはずだ…


柵…といっても、うちにいる動物は全員食用のための飼育ではないから


伸太郎が家にいる間は基本的には放し飼いだ。


しかしたまにこうして伸太郎が出かける間は


野犬から守るためにみんな柵に入れられるのだ。