この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐

伸太郎…美代の親父。


大柄で大胆で、豪快な笑い方をするダイナミックな男だ。


年齢は不詳だが、昔から若々しくたくましい。


俺の育ての親であり、俺が尊敬してきた人間。


「はははっなんか美代、ちょっと変わったなぁ」


「え~?ほんと?一人暮らししてちょっと変わったかなぁ?」


久しぶりの親子の再会に戯れる美代と伸太郎。


「……………」


眩しいその光景を羨ましく思いながら、俺は下を見ながらゆっくり改札を出た。




「あ、パパ!マサルさんも一緒に帰ってきたんだよ~」


「ん?」


美代の言葉に伸太郎の視線が俺に向けられる。


「…………っ」


俺の足は止まる。


ダメだ…


俺はそれ以上近寄れず、顔を下に向けたまま固まってしまった。


絶望的な気持ちが込み上げる。



もう…終わりだ―――…















しかし…



「おぉ!マサルも久しぶりだなぁ!」







…………え?





予想外な伸太郎の言葉に、俺はびっくりして顔を上げた。



そんな俺に構わず


「なんだマサル、ちょっと見ない間に随分デカくなったじゃねぇか!!」


伸太郎はガハハと笑った。