この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐

《え~まもなく~峠坂~峠坂~》



鼻づまりな車掌のアナウンスが車内に響く。


そしてついに、電車は運命の駅に着いてしまった。




「マサルさん?降りるよ~?」


「あ…あぁ…」


俺はボストンバックを掴むと、逃げたい気持ちを抑えながら席をたった。


「ふぁ~長旅だったね~」


電車をおりて、うーんと伸びをする美代。


「………………」


そんな清々しい美代の背中を見つめながら…俺は連行される囚人のように歩いた。







「あ!パパの車だ!」


「っ………」


美代の声にビクッとなる体。


俺は恐る恐る顔を上げた。


改札の向こうには白い軽トラック。


それに向かって駆け出す美代。


「パパ~!」


「おぉ…!お帰り美代~!」


軽トラックの外で待っていた伸太郎は、走り寄る美代を両手で抱きしめた。