そして今度こそ銀は駆けて行った。



暗い木々の向こうに消えていくその背中を見送り


俺はボスを見た。


未だに混乱が残る俺とは正反対に、ボスは落ち着き払い毛繕いまでしている。


『ボスは…銀のあの姿を見たことがあるのか?』


俺の言葉に


ボスは腹を舐めながら視線をこちらへ向けた。


『あるニャ~。』


『…………』



月明かりに照らされた深緑色の木々が、夏の夜風にさわさわと揺れていた。












全身傷だらけになった人間バージョン銀が帰ってきたのは


それからかなり後のことだった。






「遅くなってごめんポ…予想以上に転んでしまったっポょ~…」


待ちわびていた俺に


頭に葉っぱをつけた銀は申し訳なく笑った。


ちなみにこの時の俺は既に人間に戻っている。



もちろん全裸で…