この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐

「え?あぁ、マサルはこの中に」


――いますよ、


ヒゲ男がそう言いきる前に


「視聴者の皆さん!驚きの展開です!なんと!!あのイルカの青年が今日ここにいるそうです!!」


大林リポーターの興奮した声が響いた。


そして


「ぐあっ」というヒゲ男の声と共に大林リポーターやカメラマン、照明スタッフが一気に店内に突入した。


その勢いはまるで巣を攻撃された蜂の群れだった。


突入の際、ヒゲ男は興奮した大林リポーターに突き飛ばされたらしい。


そして倒れたところをカメラマンや照明に踏まれ


ヒゲ男の背中には無数の足跡がついていた。


しかし


何より気の毒なのは、そんなヒゲ男には誰も気付いていないことだ。


今やリポーターをはじめ全国のお茶の間の注目は、店内に注がれていた。


「あなたがお二人を救助された奇跡の青年ですか?」


「……!?」


いきなりマイクを向けられ、俺は言葉に詰まる。


美代も目をぱちくりさせて俺の後ろで俺の服の裾をつかんでいた。