この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐

―――――――――
――――…‥









   ――海堂寿司――   






濃紺の生地に白文字でそう書かれた、洒落たのれん。


大学の麓にあるというヒゲ男の家には、徒歩30分で行くことが出来た。




俺と美代がのれんをくぐると、中には夏美と板前の格好をしたヒゲ男がいた。


「おぉ、美代ちゃんにマサル!やっと来たか」


大きな水槽のあるカウンター内で板前姿のヒゲ男が右手をあげる。


ヒゲ男にいきなりマサルと呼ばれ俺は少しビビった。


「夏美!」


一方美代は、カウンター席に座っていた夏美を見るや否や、夏美に抱きついた。


「うわ―んっ夏美ぃ~!心配したよ~」


そんな美代の背中に夏美も腕を回す。


「へへ、心配かけてゴメンね」


「うぅ、夏美が無事で良かった…!」