この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐

――そんな時


ガラガラッと引き戸を開ける音がして、背後から美代の声がした。


「マサルさん、アキラ先輩と夏美からメールがきたよ」


「え？」


振り返るとベランダに顔をだす美代がいた。


午前中、寝室でふてていた美代も、昼になると機嫌を直し元気を取り戻したようだ。



俺はベランダからリビングに足を踏み入れた。


そして、無邪気に俺に携帯の画面を向ける美代に俺は苦笑いする。


「メールは…悪いけど美代読んでくれないか？」


美代は俺が字を読めないことを知らない。



「ん？えっとねぇ、助けてもらったお礼にアキラ先輩の家に私とマサルさんで来ないか？だって。」


「ヒゲ男の家に？」


「うん。アキラ先輩の家、お寿司屋さんだから」


ヒゲ男の実家が寿司屋？


それは俺にとってなんだか意外な事実だった。


「まぁ…俺は暇だから行ってもいいぞ」


呼んでも銀は来てくれないし。


「ほんと？じゃあ返事しとくね」




こうして俺と美代は昼飯を食いに、ヒゲ男の家に行くことになった。