この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐

「…………」


何も言えないで固まる俺。


どうする…?


マサルはまたどこかの婆さんの所に帰ったと言うか?


俺の頭はフル回転していた。


だけど…


「昨夜うさぎのマサルさんが帰ってきてくれたんだよ」


うさぎのマサルが帰ってきたことを嬉しそうに伝えてくれる美代を前に


俺はまたそんな嘘を言えるだろうか…?


俺は一度うつむくと少し考えてから、美代を見た。


美代はまだキョロキョロとマサルを探している。


美代…


「うさぎって…美代は幻覚を見たんじゃないか?」


俺はなるべく平然と美代に言った。


「美代、昨日は疲れてたから…きっと夢でも見たんだろ」


「え?そんなはずないよ!だって一緒にお風呂も入ったし布団だって…」


「俺は昨夜帰ってきてから一度もうさぎなんて見てないぞ?」


「え…?」


「美代はずっと一人で寝ていたぞ」


「う…そ………」


俺の言葉に美代はどんどん悲しい表情になっていく。