この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐

………ッ!


俺はシュッとファスナーを上げて、ゆっくり立ち上がると振り返る。


「お…おはよう、美代…」



間一髪――…‥

なんとか間に合った。



上半身は裸だけど…


初日の山吹からのレクチャーでは


“とにかく下半身だけは絶対に見せるな!”と注意されていた。


だからギリギリ大丈夫なはず…


美代は寝ぼけているのか、ボサボサの頭でぼんやり俺を見ている。


「マサルしゃん…いつ帰ってきたの?」


美代は首をかしげた。


「昨夜…心配したんだよ?」


そして寝ぼけながらもぷくっと頬を膨らませる美代。


寝起きのすっぴんはいつもより幼く見えた。


「あぁ…すまん」


「ん、それよりうさぎのマサルさんは??」


美代はリビングをキョロキョロ見渡した。


俺はそんな美代の発言にドキリとする。


「ねぇ、マサルさん。うさぎのマサルさん見なかった??」


美代はまた首をかしげた。