「きゃ~!こっちの彼は可愛い系じゃん!」
―――あ?
顔から落ちる汗をTシャツの肩で拭いながら俺が顔をあげると
水着のお姉さん達がいつの間にか俺を取り囲んで見ていた。
「………!?」
え?…何事だ?
俺を包囲しているのは、やたら焼けた肌にギラギラと光る唇。
「ねぇ歳いくつ?タメぐらい?」
「やっべ、マジかわカッコいい系じゃね?」
爪は緑でやたらと長い。
「………!!?」
俺は恐ろしくなり、あわてて店内に逃げた。
「マサルさん、注文つまってるでぇ!じゃんじゃん作ってや~」
店先からは山吹の声が飛ぶ。
「も…もうやっている…!」
動転した気を落ち着かせ、俺はまた厨房に向かった。
「マサルさんがいると商売繁盛やなぁ~♪招き猫ならぬ招きウサちゃんや」
「な…なんだよそれ」
俺が山吹を振り返ると
山吹はカウンターに腰をかけて笑顔で俺を見ていた。
逆光で輪郭の輝いた山吹に
俺は初めて山吹が本当に天使のように見えたのだった。



