この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐

ふざけるな…!と怒鳴ってやりたいところだが…


次々に押し寄せる注文にもはや文句を言う暇すらない。


幸か不幸か


元うさぎの俺の耳は、店内からでも外にいる客の注文を聞く事ができた。


しかも


集中すれば複数の声をいっぺんに聞きとることも可能。


それをすると疲れるが…


今はやるしかない。


メモる暇もないし。


聞こえる大量の注文を脳に叩き込み、食材をひたすら調理していく。








「おい山吹!焼きそばの客は、焼きトウモロコシは2本だぞ!」


俺は慌ただしい厨房を一旦離れると


店先に出ている山吹に、焼きトウモロコシを渡しに行った。


「お、マサルさんよう覚えてるなぁ!」


振り返りながら焼きトウモロコシを受け取る山吹は、悪びれなく笑う。


ただでさえ手一杯なんだから、受け渡す分くらい正確にして欲しい。