この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐

そんな黄色い歓声を聞きながら


俺は店内で1人狭い厨房のなか、馬車馬の如く働いていた。





「はぁ…あっちぃ…」


目まぐるしい程の忙しさに厨房の暑さが加わり、止まらない汗。


人間はうさぎと違い


体温調整を全身の発汗で行うらしい。


初めての大量の汗に戸惑いながら、俺は滴り落ちる汗が料理に入らないように


キャップ帽を脱ぎ捨て、代わりに頭にタオルを巻いた。



さらに疲労がかさむのは


俺は調理をしながら客の声にも神経を集中させなければならなかった。


カウンターにいるはずの山吹は注文を通してくれないから…。



山吹は店が繁盛して注文が殺到した時点で


「もう俺には無理や」


と、注文伝票を作る作業をいとも簡単に放棄したのだった。


だから俺は仕方なく


大量の注文を自分自身で聞き取るハメになった。