この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐

「うそ~~~!?又吉、良い子だよ」


美代は目をパチパチさせる。


「あれは餌を得るための演技だ」


「え――――!?って…それより、なんで又吉って名前知ってるの?私が勝手に呼んでただけなのに」


「え?そうか…?いや、なんかあの金魚、又吉って顔してたから」


「うそ―――!?やだ、あははは」


又吉の話をしながら俺は実家を懐かしく思っていた。


実家にいる仲間全員、今の俺を見たら腰を抜かすだろうな…










そうこう話している内に、俺と美代は店の前までやってきた。


南国のココナッツ屋のような小さな店。


「お♪いらっしゃ~い」


店内から帽子を目深にかぶった店員の陽気な声がした。


客は他にいない。


木製のカウンターの下にはメニュー表が貼り付けられている。


「あ~…と」


俺は少し腰を屈めてメニューを見た。


文字はわからないが、なんとか写真で判別出来そうだ。