この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐

「わ、わかったから…引っ張るなよ///」


俺は美代の腕から逃げるようにその手を振り払った。


そして美代と一緒に海に向かって歩きだした。


「そういえばここの海岸、沖にいくとたまにスナメリも見れるらしいよ」


砂浜を歩きながら美代が目を輝かせて言った。


「スナメリ?」


「うん。小型のイルカなんだって!」


「へぇ~」


スナメリね…


美代はスナメリが見たいんだろうか。










――その時




「だから、あんたは駄目って言ってんでしょ?!」


ふいに背後から夏美のわめき声が聞こえた。


その声に俺と美代が振り返ると


いつの間にか海パン姿になっていたヒゲ男が


夏美によって砂浜の上で羽交い締めにされひれ伏せていた。


汗をかいたヒゲ男の肌は今や砂まみれになっている。







「…夏美といる時のヒゲ男は、少しは哀れに見えるな」


俺はヒゲ男に多少の同情を交えた視線を向けた。


「あはは、アキラ先輩、夏美に弱いからなぁ」


美代も苦笑いしていた。