この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐

「あれ?お友達、帰っちゃったの?」


コンビニの袋を提げた美代が、リビングに戻ってきた。


「あぁ。急用らしくて…てか、朝からいきなり悪かったな」


「ううん、でもせっかくおにぎり多めに買ってきたのにな~」


美代は袋を丸テーブルにガサッと置く。


袋の中からはおにぎりの他に、コーン缶が見えた。


美代がたまに銀にやってる飯だ。


山吹だけじゃなく銀の分まで買ってきたのか…


俺が美代を見ると、美代はキッチンに向かい麦茶とコップを用意していた。


トプトプと注がれる麦茶。


氷がカランとゆれて


開放されたベランダからは朝の夏の匂いが風にのって入ってきた。


今日も暑くなりそうだ。


美代は2つのグラスを机まで運ぶと、1つ取り俺に向けた。


「マサルさん、乾杯」


「ん?」


俺は意味もわからないままに


とりあえず美代の真似をして、残りのグラスを手に掲げた。


美代が手を伸ばしチン、と軽く重なりあうコップ。


何かの儀式だろうか。