この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐

しかし山吹は俺の腕を離してはくれなかった。


「なんや胸騒ぎがしてな。戻ってきたんや」


胸騒ぎ……??



そして山吹は俺に怒り出した。


「お前は…なにを考えとんねん!」


「え?」


「せっかく俺が良い雰囲気に仕上げてんのに…ぶち壊しやがな」


いきなり怒る山吹に俺は唖然としてしまう。


なんで俺、怒られなきゃなんないの?!


ハテナが飛ぶ俺に山吹は大げさな泣き真似をし始めた。


「お前のせいでせっかく増えてきた読者様がすっ飛んでまうやろ!」


「……はぁ?!」


「はぁ?はこっちの台詞やッ」


「……………」


戸惑いつつ眉間にシワをよせる俺。


そんな俺に、嘆いていた山吹は何かを諦めたように小さくため息をついた。


「とりあえず…はよ尻しまえや」


俺の尻をちらりと見てまたため息をつく山吹。



そして山吹はようやく掴んだ手を離してくれた。


「…………」


なんだか納得がいかない。


言われなくてもしまうっつうの


尻をしまえなかったのは山吹のせいなのに。