この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐

そんな美代の背中を見送って、玄関が閉まる音を確認すると


俺はベランダを振り返って言った。


「山吹…ちょっと強引すぎ」


結果的に上手くいったが、美代ビビってたし。


そんな俺に対して


「そか?でも俺のお陰で助かったやろ?嬉しいやろ??」


山吹はベランダにもたれながら自信満々にどうだとばかりに聞いてくる。


そんな山吹に俺は何かを言い返す気も失せ、小さく息をついた。


「はぁ…まぁ、結果的にはとりあえず助かったよ」


野宿は嫌だったし…


「せやろ~?マサルさん1人やったら絶対住むとこ困るやろなぁ思ってたんや♪」


「てか、なんで美代に山吹が見えたんだ?」


「ん?そういう風に念じたからな。まぁ普段は滅多に姿は出さんけどマサルさんに助け船だす為やし出血大サービスや」


「…………」


山吹はニカッと笑顔を見せた。


「ほな俺と銀は仕事があるから帰るで」


そしてヒラヒラと片手をあげた。


『マサル氏!がんばるっポよ』


山吹の肩の上で銀も片翼を上げる。


「ん、」


それに答えるように俺も右手を軽く上げる。


山吹と銀は空に消えて行った。





ふぅ…


朝から続いたドタバタがようやく落ち着いた。


銀と山吹の背中が見えなくなりほっとした俺は


同時になんだかお腹がグルグルしてきた。