朝食の席に着くと、武寅の他に数名座っていた。

皆零次朗を見ると、笑いかけたり、頷いたりした。

「佐緒里様によう似とる」
「いや、良い気を持っている。類い希なる才能じゃ」

皆零次朗が来るのを待っていたようだ。
朝食には誰も手をつけていない。

武寅がおもむろに口を開いた。
「皆はもう知っておると思うが、孫の零次朗じゃ。零次朗、皆を紹介する。まずは、この村で、儂の補佐をしている籐兵衛じゃ」

「籐兵衛です。お見知り置きを」
武寅の隣に座っている老人が、白髪頭をひょいと下げた。

「そしてその隣は、霧蔵。この村の財政を見ている。この村は共同体なので、自治組織があるのじゃ。その経理部門の長じゃ」

大きな黒縁のめがねを右手で押し上げると、
「霧蔵でございます。宜しくお願いします」
と、ぼそっと呟くような声で行った。

「霧蔵は人見知りをするのでな、初対面の時はいつもこうなのじゃ。が、頭の切れる男だ。続いて、甲三郎。儂の弟じゃ。霊魔との交渉が担当。甲三郎は何故か霊魔に好かれて、霊魔からの指名で交渉役をやっとる。甲三郎には、零次朗がおる間の世話役になってもらうと思う」

小太り赤ら顔の男が立ち上がった。
「甲三郎です。零次朗君、君も霊魔たちに好かれているようだ。宜しく」

「零次朗です。宜しくお願いします」
 零次朗もあわてて挨拶を返した。

「では、食事にしよう。零次朗、たくさん食べるのだ。この村の食事はすべて天然のものだから、身体によい」

山の幸海の幸が並んでいた。
朝食とは思えない量である。

零次朗は、空腹感を急に感じた。